

この記事の内容
- 日本看護協会が発行している「病院看護実態調査」から看護師の働く環境について提示していく
この記事が参考になる方
- 他の病院と比べて自分の働く環境は良いのか悪いのか知りたい方
- 転職を考えているが、他の病院はどういった状況なのか知りたい方
この記事の作者について
- 3次救急病院で夜勤ありの看護師をしています。
- 私は3交代、妻は2交代で働いています。
- お互い20代で子供はいません。
病院看護実態調査とは?
日本看護協会が毎年調査報告しているPDF形式の資料で、教会の言葉を借りるなら
看護サービス、看護職員、看護教育の実態はもちろんのこと保健・医療・福祉をとりまく状況を正しく理解するため、「病院実態調査」等の独自の調査を行っています。
とのことです。
これを見れば看護師の働く環境が全国単位でみることができるため、今の自分の環境と比べることができます。
この資料についてですが、こちらから見ることができるため興味のある方は参考にしてください。
注意ポイント
- 2020年度Verは出ていなかったので、2019年度Verです。
- 記載しているのは全てではなく、「個人的に働く環境を知るうえで参考になりそうだな」と思った部分を適時抜粋しながら記載しています。そのため見方によってはバイアスがかかる可能性もあるため、あくまで参考としたうえで必要時は元の資料も閲覧するようお願いします。
病院毎の回収属性
調査対象
8300施設 うち有効回収数3385(40.8%)
都道府県別回答回収割合
高い順
- 北海道235施設(6.9%)
- 東京都226施設(6.7%)
- 大阪府184施設(5.4%)
- 神奈川県166施設(4.9%)
低い順
- 福井・鳥取(0.7%)
- 島根・徳島(0.8%)
- 秋田・佐賀・山梨(0.9%)
- 宮崎・香川(1.0%)
病床数
件数 | 割合 | |
99床以下 | 852 | 25.2% |
100~199床 | 1180 | 34.9% |
200~299床 | 496 | 14.7% |
300~399床 | 370 | 10.9% |
400~499床 | 215 | 6.4% |
500床以上 | 269 | 7.9% |
無回答・不明 | 3 | 0.1% |
平均(n=3382) | 3385 | 100% |
地域での役割
件数 | 割合 | |
高度・専門的な入院医療を提供し、重度の急性期疾患に対応する | 388 | 11.5% |
急性期疾患で入院医療が必要な患者や、比較的軽度な
急性期患者に対応する |
546 | 16.1% |
急性期や回復期、慢性期等の患者に対する複数の機能をもち、地域のニーズに幅広く対応する | 1155 | 34.1% |
急性期病院の後方支援やリハビリテーションの機能をもち、在宅復帰をめざす患者に対応する | 409 | 12.1% |
長期にわたり療養が必要な疾患・障害のある患者に対応する | 599 | 17.7% |
訪問診療や訪問看護を提供し、在宅療養する患者に対応する | 8 | 0.2% |
地域住民の「かかりつけ医」として、比較的軽度な急性期疾患や
健康管理に対応する |
65 | 1.9% |
その他 | 90 | 2.7% |
無回答・不明 | 125 | 3.7% |
計 | 3385 | 100% |
正規雇用看護職員の離職状況(2018年度より)
平均離職率
- 看護職員全体の離職率 10.7%
- 内新卒採用者の離職率 7.8%
- 内既卒採用者の離職率 17.7%
*看護職員は保健師、助産師、看護師、准看護師をさす
*また離職率の中には定年退職者も含まれている
*新卒既卒採用者の離職率の求め方として、当該年度に採用された中で退職した人数を算出している。言い換えると1年以内で辞めている職員の数。
都道府県別離職率(高い順)
- 正規雇用看護職員 東京都(14.5%) 神奈川県(13.1%) 千葉県(12.8%) 兵庫県(12.6%)
- 新卒採用者 愛媛県(12.2%) 三重県(10.7%) 東京都(10.6%)
- 既卒採用者 岩手県(22.7%) 滋賀県宮崎県(22.6%で同率) 高知県22.5%
有効回答 病院数 |
新卒採用者 離職率 |
|
愛媛 | 41 | 12.20% |
香川 | 30 | 6.60% |
徳島 | 25 | 8.30% |
高知 | 33 | 9.30% |
東京 | 203 | 10.60% |
千葉 | 110 | 6.90% |
神奈川 | 149 | 9.30% |
埼玉 | 103 | 6.10% |
群馬 | 58 | 9.20% |
三重 | 49 | 10.70% |
静岡 | 60 | 4.90% |
岐阜 | 38 | 5.90% |
愛知 | 105 | 7.30% |
設置主体別離職率(それぞれのトップ)
- 正規雇用看護職員 「その他公的医療機関」(17.0%) 回答病院数3
- 新卒採用者 「済生会」(11.6%) 回答病院数60
- 既卒採用者 「個人」(26.7%) 回答病院数32
*上記はいずれも分母である回答数が少ないため率が上がりがち。そのため以下に有効回答数が多い順に再度記載。
設置主体別離職率(多い順に左から病院種類:回答病院数で記載)
①医療法人:1617 ②公立:541 ③国立:186 ④その他の法人:132
- 正規雇用看護職員 ①13.2%②7.8%③10.2%④11.9%
- 新卒採用者 ①8.6%②8.7%③6.7%④10.7%
- 既卒採用者 ①20.4%②8.7%③13.4%④19.9%
病床数別離職率
正規雇用看護職員 | 新卒採用者 | 既卒採用者 | ||||
回答病院数 | 離職率 | 回答病院数 | 離職率 | 回答病院数 | 離職率 | |
計 | 3078 | 10.70% | 3070 | 7.80% | 3066 | 17.70% |
99床以下 | 720 | 11.50% | 717 | 11.30% | 716 | 25.70% |
100~199床 | 1073 | 11.50% | 1070 | 9.50% | 1071 | 19.60% |
200~299床 | 456 | 11.50% | 459 | 7.90% | 458 | 16.70% |
300~399床 | 356 | 10.60% | 355 | 6.80% | 354 | 15.00% |
400~499床 | 204 | 10.20% | 203 | 8.30% | 202 | 14.10% |
500床以上 | 263 | 10.40% | 263 | 7.40% | 262 | 11.70% |
無回答・不明 | 3 | 12.40% | 3 | 0% | 3 | 11.10% |
傷病による連続休暇(7日以上)を取得した正規雇用看護職員(2018年度より)
1 病院あたり 平均 9.6 人
看護職員における平均値で見ると全体の5.4%に当たる
有効回答病院数 | 取得総人数 | 1病院辺りの平均 | 割合 | |
症状による連続休暇取得者 | 2986 | 28530人 | 9.6人 | 100% |
内メンタルヘルス不調 | 2986 | 6881人 | 2.3人 | 24.10% |
内妊娠流産等妊娠出産に伴う不調 | 2986 | 7471人 | 2.5人 | 26.20% |
内腰痛 | 2986 | 1257人 | 0.4人 | 4.40% |
内その他の傷病 | 2986 | 13042人 | 4.4人 | 45.70% |
離職率について思う事
全体の離職率に関しては寿退社や妊娠出産に伴う退社(産休育休ではなく)、女性の場合は夫の転勤に伴う退職などぞれぞれ事情はあるため気にしなくていいだろう。
ただし新卒の退職者の割合に関しては注目したい。東京はまあ仕方がないとして上位2県の愛媛と三重に関しては同じ地域の他県と比べても明らかに高い。
また、傷病休暇の割合として、女性特有の妊娠出産は気にする必要がないが、メンタルヘルスの休暇が1/4は見逃せない。
というよりこの項目を単独で表現しているだけでも看護師の職業環境が異常かわかる。
看護職員の労働条件
月当たりの超過勤務について
件数 | 割合 | |
0時間 | 184 | 5.40% |
0時間超から1時間未満 | 405 | 12% |
1~4時間未満 | 985 | 29.10% |
4~7時間未満 | 711 | 21% |
7~10時間未満 | 461 | 13.60% |
10~15時間未満 | 380 | 11.20% |
15~20時間未満 | 93 | 2.70% |
20時間以上 | 31 | 0.90% |
無回答・不明 | 135 | 4% |
計 | 3385 | 100% |
平均(n=3250) | 5.2時間 |
前残業の扱い
- 扱っている:21.5%
- 扱っていない:62.9%
知らない人のために説明すると、看護師の場合その日来るまでは基本的に受け持ち患者がわからないため、実習の時のような情報収集を毎日行う必要があります。
そのためこちらの記事で紹介したような勤務形態であったとしても、部署によって違うが私のいる集中治療室はだいたい朝の申し送りの45分前くらいに来ていることが多いです。
その扱いは病院によって違い、その時間のことを前残業と呼んでいます。
時間外の院内研修への参加に対する超過勤務の扱い
- 扱っている:21.8%
- 一部扱っている:49.3%
- 扱っていない:26.4%

時間外労働に対する対応策
件数 | 割合 | |
看護職員の数を増員した(する) | 667 | 23.30% |
看護職員以外の多職種へ業務を移譲した(する) | 994 | 34.60% |
時間外労働の削減に関して業務改善を行った(行う) | 2139 | 74.40% |
その他 | 506 | 17.60% |
無回答・不明 | 88 | 3.10% |
休みの形態
週休形態(高い順)
- 週休2日(4週に8日の休み):1616件(47.7%)
- 週休2日(1週に必ず2日の休み):847件(25%)
- 月2回週休2日(4週に6日の休み):213件(6.3%)
年間休日総数
件数 | 割合 | |
100日未満 | 92 | 2.70% |
100日~110未満 | 534 | 15.80% |
110~120未満 | 957 | 28.30% |
120~130未満 | 1336 | 39.50% |
130日以上 | 325 | 9.60% |
無回答・不明 | 141 | 4.20% |
計 | 3385 | 100% |
平均(n=3244) | 118日 |
完全週休2日(毎週必ず土日休み)の場合で年間104日。
そこに国民の祝日(2020年度における)は16日を足して毎週休みの日とは2020年度年間休日120日になります。そこに各病院の夏休みなどを加えた結果が上記の120~130が一番多い結果になったのではないでしょうか。
有給消化率
件数 | 割合 | |
10%未満 | 66 | 1.90% |
10~20%未満 | 141 | 4.20% |
20~30%未満 | 164 | 4.80% |
30~40%未満 | 315 | 9.30% |
40~50%未満 | 416 | 12.30% |
50~60%未満 | 504 | 14.90% |
60~70%未満 | 463 | 14% |
70~80%未満 | 423 | 12.50% |
80~90%未満 | 373 | 11% |
90%以上 | 270 | 8% |
無回答・不明 | 250 | 7.40% |
計 | 3385 | 100% |
平均(n=3135) | 58.50% |
*前年度繰越分は含まない
夜勤回数について
- 2交代:月平均4回超から5回未満が最多で38.2% 時点で3~4回未満で18.3%
- 3交代:月平均7.6回 平均拘束時間8.7時間 時点で8回超~9回未満で25.3%
夜勤についてはこちらの記事でも紹介しているので参考にして下さい。
給与について
2020年度採用看護師の平均給与
- 3年過程卒 :264307円
- 4年制大学 :272018円
- 看護系大学卒 :277472円
*3交代で夜勤8回、2交代で夜勤4回と仮定した場合の数字
給与については夜勤の回数が大きなウエイトを占めています。こちらの記事も参考にしてください。
勤続10年・非管理職員の給与
- 平均基本給与額:245459円
- 平均給与総額 :320773円
まとめ
- 新卒看護師の1年で辞める割合:7.8%
- 設置主体別でみれば、国立病院は新卒看護師の辞める率は低い
- 長期取得の理由としては、1/4がメンタルヘルスによる不調であり非常に高いと言わざるを得ない。
- 前残業や院内研修の扱い等残業に対する扱いは大きく異なっている
- 平均では月5.2時間となっているが、実際は急性期病院の方が多くクリニックや慢性期病院などは少ない傾向にあるだろう。
- 休みについても年間休日は多いところが多いが有給取得はあまり進んでいない状況
皆さん自分の病院と比べてどうでしたか?
こちらのアンケートが病院からの回答になるため、多少良く脚色されている部分もあるかもしれませんが、大まかな労働環境はつかめたのではないでしょうか。
今回こちらの記事を書くうえで何が言いたかったかというと、全国どこでも病院はあり今の環境だけがすべてではないという事です。
今の環境で無理だと思ったら、メンタルヘルスに不調をきたす前にさっさと辞めて次の病院に移るのが良いでしょう。
何度も言ってますが資格があることは強いです。
働きづめで動けなくなる前に次の病院を探しておくのも精神の安定をはかる意味では良いと思うので、今回の記事の内容と比べて自分の病院があまりにも悪い場合は一度転職を検討してみてはいかがでしょうか?
今回は以上になります。
ありがとうございました。
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