
YouTubeでも医療保険や生命保険等不要であると言ってる方が多いですが、実際の所現場で働いている人から見てどうでしょうか?
今回の記事は、最近医療保険や生命保険について個人的に調べているため、実際のがん治療やがん以外の治療に触れながら、どれくらいの保証が最低限必要なのか記載していきます。

記事の内容
- 一般的ながん治療の流れについて
- がん治療とお金について
結論
実際の保険で最低限必要なものとしてはこれだけ
- 入院1日に付き3,000円
- 入院して1か月までカバーされる
- 退院後の通院もカバーされていたい
注意ポイント
ちなみに今回の記事は、医療保険についての記載です。
がん治療に対してと書いていますが、がん以外の診療も含めての見解を述べさせていただきます。
医療保険以外に「がん保険」もありますが、こちらに関しては今回の記事とはまた別の結論があるため後日記載していく予定です。
あくまで今回は、「がん治療が主体だが、がん治療以外も含めた治療全般に対する医療保険の必要性」を記載しています。
がん治療について
看護師向けですが、詳しく記載した記事があるので興味のある方はこちらも参考にしてください。
これを読んでからの方がイメージしやすいと思います。
一般的ながん治療の流れ
がんの治療法については大きく3種類あります。
- 手術療法
- 放射線療法
- 薬物療法(抗がん剤)
治療の流れについて
- 体調不良や健康診断で受診
- もろもろ検査してがんの診断がつく
- がんに対して治療をする
数週間~数か月単位
場合によっては数年 - 完治する
- 退院直後は頻回に外来が合ってその都度採血や検査
- 完治の期間が長くなったら外来頻度も下がってくる
- 以後再発がないか定期的に外来で検査する
一般的にはこのような流れですが、当然完治をせずに途中で亡くなることもあります。
また、抗がん剤治療の場合、治療途中で入院ではなく外来治療に切り替わることもあります。
言い方は悪いですが、人によっては追い出されたと感じる人もいるかもしれません。
例えばこんな感じ
- がんの診断がついて、抗がん剤治療をするために入院
- 初めての抗がん剤なので副作用がどれだけ出現するかもわからない
- 最初の1クールが終了して、副作用もそこまで重篤ではないため2クール目からは外来治療に切り替える
- 以後2クール目は2週間に1日通院して抗がん剤治療を受けて、それ以外の日は普通に生活してもらう
そもそも、がんには大きく分けて2種類あります。
- 臓器がん(臓器がん)
例)大腸がん、肺がん、胃がん、乳がん等 - 血液がん
例)白血病、悪性リンパ腫等
臓器がんについて
文字通り臓器にできるガンのことです。
例えば胃がんの場合、第一選択は手術です。
つまり、「がんである胃を切り取ってしまえば、体からがんはいなくなるでしょ?」という理屈です。
これは他の臓器がんにも言えることで、がんのある臓器を切ることが優先されます。
血液がんについて
血液中にがんがあるというイメージ(正確には違うが)です。
血液にがんがあるため、当然手術で切り取ることは不可能です。
そのため、点滴や飲み薬で抗がん剤を体の中に入れて治療します。
- 薬の影響で脱毛が起きて帽子をかぶってる
- 無菌室に入って窓越しに面会している
- 副作用でゲーゲー吐いたり点滴を押しながら歩いている
みたいな感じ

ここまでが、がん治療の一般的な流れであり、この後の話をスムーズに聞いてもらうための前提知識です。
がん治療と保険について
実際の治療現場と合わせて、どれくらいの規模の保険に備えればいいのかを検討していきます。
最近(もしくは少し前くらいから)色々言われている保険ですが
いつ起こるかわからないが、万が一起こった場合は自分で対処するのが難しいことに備えるのが保険
この前提で話をしていきます。
参考記事
入院1日辺り〇円支払いが必要
今の私の月の給料が30万円弱
その給料で計算した場合、高額療養費制度を使用すると自己負担額は月当たり最高でも約3000円/dayになります。
この自己負担額に加えて
- 食事代:約1,400円/day×30日=約42,000円
- 個室代:約6,300円/day×入った日数(個室に入った場合)
病棟によっては大部屋でも部屋代がかかりました。

最低限自己負担額上限の約3,000円がカバーできればいいです。
入院1日辺り3,000円支払いが必要
入院1日辺りの支払いが〇日まで保証される
国としても入院日数は減少傾向にあります。
現場で働いていた感覚でも、入院日数はどんどん短くなっていきましたし、世間一般で重症と言われている病気でも本当に数日で退院することも珍しくありません。
平均在院日数については厚生労働省が出している公式のデータもあるので参考にしてみてください。
出典:厚生労働省「平成29年患者調査」(PDFデータです)
以下かいつまんで抽出
傷病分類別の在院日数ランキング
- 精神および行動の障害:277.1日
- 神経系の疾患:81.2日
- 循環器系の疾患:38.1日
1位には統合失調症やうつ病以外にも、認知症が含まれています。
そして2位には神経系疾患の対象としてアルツハイマー病が載っています。
いずれにしても、高齢者の割合が多くなると、病気が落ちついて退院できるとなっても、退院場所の問題や介護者の問題などで入院は長期化しやすいです。
そのため、いわゆる働き世代の方を対象とした保険を考えるならば、3位の循環器系疾患:38.1日を参考にするべきだと個人的には考えています。
年齢別平均在院日数
- 全年齢:29.3日
- 15歳~34歳:11.1日
- 35歳~64歳:21.9日
- 65歳以上:37.6日
主な疾患別の平均在院日数
- 悪性新生物(いわゆるがん):17.1日
- 心疾患:19.3日
- 脳血管疾患:78.2日
- 呼吸器系疾患:25.3日
- 消化器系疾患:10.8日
脳血管疾患だけ飛びぬけて高いですが、これはおそらく脳血管疾患(いわゆる脳梗塞や脳出血)後にマヒや障害が残りリハビリをしたためと思われます。
このデータだけだと飛びぬけて高いですが、脳血管疾患の年齢別データを見ればまた違った見え方になります。
脳血管疾患の年齢別平均在院日数
- 15歳~34歳:25.6日
- 35歳~64歳:45.6日
- 65歳以上:86.7日
これらのデータから読み取れることは、入院90日も180日も続くことは稀であるという事です。
入院1日辺りの支払いは1か月程度カバーできれば十分
ちなみに
よく3大疾病プランとしてがん+急性心筋梗塞+脳卒中と見かけませんか?
心筋梗塞と聞くと、さぞや大変な入院なんだろうと思われるかもしれませんが、実は標準的なもので言えば10日前後で退院できます。
勿論重症度によって違いますが、気になる方は「心筋梗塞 クリニカルパス(クリティカルパス)」で検索してみてください。
脳卒中とは多くの場合脳梗塞、脳出血、くも膜下出血を総称して脳卒中と呼んでいます。
心筋梗塞に比べて脳卒中の場合はもう少し入院は長くなります。
先進医療についても支払います!
よくある保険側のうたい文句として以下がありますが正直いらない派です。

- 陽子線治療〇百万円!
- 重粒子線治療△百万円!
実際先進治療を受けるとこんだけかかりますよ!
それも私たちの保険ではカバーできます!
実際の所対象となる疾患は限られており、先進医療を行える病院も限られています。
また、当然良い治療法は保健適応になっており、普通はそれらの保健適応になっている治療方法から試していくことになります。
当然最初から「先進医療でいきましょう」とはなりません。
実際のところは、普通の一般的な治療法がダメで、セカンドオピニオン的な感じで先進医療に希をかけてというパターンになりがちです。
実際に上記の先進医療が適応となる疾患と行える病院のリンクを張っておくので気になる人はどうぞ。
先進医療特約私はつけない派
手術1回に付き〇万円給付される
がん治療における手術とは、多くの場合臓器がんに侵された臓器を切る手術になることが多いです。
胃がんならば胃を、肺がんならば肺を。
逆に血液がんの場合は、基本的に手術をすることはありません。
また、手術代は当然高額療養費制度の対象になります。
そして、手術をするくらいだから入院は長くなるだろうというのも誤解です。
たとえ臓器を切ったとして、2週間位で退院じゃないでしょうか?
急性期の病院であればあるほど、手術をやった次の日には(術後回復、リハビリとして)歩かされます。
手術1回に付き〇万円給付されることは重要視しない
退院後の通院も入院給付金日額の〇%受け取れる
皆さんは病院から退院=完治だと思っていませんか?
これは間違いです。
抗がん剤治療に関して言えば、「通院しながら治療ができる」と判断されたら通院治療に切り替わることは当たり前です。
そのため、退院後の通院も
- 抗がん剤を投与するための通院
- 再発していないか検査のための通院
- 副作用が大丈夫か検査のための通院
こんな感じで分類されます。
抗がん剤も物によっては完遂まで半年くらいかかることもあります。
必要最低限の保証だと、保険によっては
入院では支払いを受けれるけど、通院はカバーされていない
というパターンもあるため注意が必要です。
退院後の通院も入院給付金日額の〇%受け取れるかチェックが必要
まとめ
- 現代日本では入院日数の短縮が起きており、平均在院日数は約1か月程度
- 平均的な給料の場合、高額療養費制度を使用すれば実際の医療は1日辺り3,000円程度
- 退院=病気の完治ではないため通院治療も念頭に置くべき
- 1か月毎日3,000円貰えれば最低限のカバーはできるという考え方もできる
関連記事
今回は以上になります。
ありがとうございました。
がん治療とお金について
ここまで、保険については必要最低限と言ってきました。
ここからは最初の結論と違ってきますが、現場で働いたうえでの怖い話をさせていただきます。
この話も踏まえた上で、自分たちはどこまで備えるべきか考えてくれると嬉しいです。
当然がんになれば入院して治療をします。
治療が上手くいけば退院できますが、当然全てが上手く行く訳ではありません。
もしも治療が難航すれば、地元の大学病院ではなく東京や大阪などの全国規模で有名な病院に望みをかけて転院させてくれと頼むかもしれません。
子供が小さい、パートナーの仕事の関係などであれば一家で引っ越しは無理でしょうし、自分一人だけが心細い中移ることになります。
仮に治療が上手くいったとして、すぐに再発してしまって結局また入院生活に戻ってしまう可能性だってあります。
一家の収入の柱ががんになれば、その家庭は一気に収入面で不安を抱えながら治療にあたることになります。
若いうちにがんになれば、まだ必要ないと保険に入っていないかもしれません。
若いうちにがんになれば、付き合ってるパートナーや結婚したてのパートナーと自分が死んだ時の事や将来の子供の事なども話し合わなければいけません。
若い人(といっても50代でも病院では若い患者になります)ががんになると、必ず看護師の間では「保険が大事だね」という話になります。
賃貸住宅であれば、入院が長引くからと家を解約しようか迷うかもしれませんがそうすると本当に帰る場所がなくなってしまいます。
両親やきょうだい等近くに住んでいればいいですが、みんながみんなそういったわけではありません。
入院になっても自分は大部屋で大丈夫だと思っているかもしれませんが、病院の大部屋はカーテンで仕切られているだけなので想像以上にプライバシーはありません。
軽い病気での入院ならいいですが、重たい病気であればあるほど個室を求める傾向は強く、かつ若い家族(特に子供がいるような家族)ほど個室を求める傾向にあります。
あなたが大部屋で一緒になる患者には以下のようなパターンもあり得ます。
- 認知症で夜な夜な徘徊する患者
- 忘れっぽくて自分のベッドと間違えてカーテンを開けてくる患者
- Nsコールを連発しすぎて看護師に四六時中小言を言われている患者
- うまく歩けないため、ベッドの横でトイレの大や小をする患者
- いびきがとんでもなくでかい患者
あくまで実際に働いたうえでのフィクションとして聞いてもらえればいいのですが、こういったことが起こる可能性は誰にだってあります。