

この記事の内容
- IMPELLAについて
- 循環動態への影響について
- 臨床での管理における注意点と考え方
この記事が参考になる方
- 集中治療室や心臓血管外科、循環器科に勤務されておりある程度循環動体の流れが理解できている方向けに記載しています
- PCPSやIABPなどを見たことがある方
- 右心不全、左心不全の病態整理ができている方
IMPELLAについて
2017年9月より日本でも使用ができるようになった補助循環装置です。
適用としてはあらゆる内科治療が効果的ではない心原性ショックに適用されます。
具体的には以下があげられます。
- 超重症の急性心不全
- 激症型心筋炎
- 急性心筋梗塞
逆に禁忌としては以下があげられます。
- 大動脈弁に機械式人工弁を埋め込んだ患者
→機械式弁の中にIMPELLAが通過することで損傷するリスクがあるため - 中等度以上の大動脈弁閉鎖不全症がある患者
→大動脈弁とカニュラの密閉性が減られずポンプが正常に働かないため
注意して使用としては以下があげられます。
- 左室内の壁在血栓
→血栓によるモーターの停止や抹消閉塞のリスク - 大動脈弁狭窄/石灰化
→IMPELLAが通過できない可能性がある - 右心不全
→左室フィリングが得られず適切な循環補助ができないリスク
→PCPSの併用で右心負荷を軽減することで対応もできる
IMPELLA自体には大きさが3種類あり、以下のように分かれます。
IMPELLA 2.5 | IMPELLA CP | IMPELLA 5.0 | |
最大補助流量 | 2.5Ⅼ/min | 3.7Ⅼ/min | 5.0Ⅼ/min |
最大回転数 | 51000 | 46000 | 33000 |
ポンプ経 | 12Fr | 14Fr | 21Fr |
シャフト経 | 9Fr | 9Fr | 9Fr |
挿入方法 | 経皮的 | 経皮的 | カットダウン |
設計上の使用日数 | 5日 | 8日 | 10日 |
5.0は皮膚を切開し血管を露出してから挿入する必要があるため、当院の場合、多くの症例でCPを入れることが多いです。
特徴
- 経皮的に挿入できるため、開胸が必要なLVADに比べて緊急性に優れている
- 左心室内まで挿入したポンプから吸入して、血行動態に対して巡行性に血液を吐出できるため左室負荷の軽減が期待できる
*PCPSの場合血行動態に対して逆行性となり左心にとっては負担 - カテーテルやポンプ、付属するモニターが小型のため他の補助循環装置に比べて体への負担が小さい。かつ医療者側(特に日頃管理する看護師)への負担も小さい。
仕組み
IMPELLAを販売?しているABIOMEDのHPから引っ張っている動画ですが、その紹介方法が分からなかったためYouTubeに上がっている聖隷浜松病院の動画を参考にしてください。
鼠経から挿入されたカテーテルを左心室内まで挿入して、直接左心室内から吸入して、上行大動脈に吐出する。
上記の画像でいえば、吸入部が左心室内、吐出部が上行大動脈に留置されるように固定されます。
モニターは一つだけで、PCPSは勿論のこと、IABPよりも一回りガスがない分小さくなっています。
また、IMPELLAは定流波のためIABPのような音もならず、実際聞いてみるとかなり静かです。
IMPELLAによる循環動態への影響
IMPELLAは、それぞれ補助レベルというものが設定されており、おおむねP-0~P-8の間に設定されており、ダイヤルを回すだけで変更できます。
数字が大きくなるにつれてIMPELLAによる介入が強くなり、補助レベルを上げる=ポンプの回転数を上げると捉えてもらえば良いです。
ポンプの回転数を上げることで、より多くの血液を吸入吐出することができます。
循環動態への影響としては、ABIOMEDの紹介でも以下のように挙げられています。
- 平均血圧(MAP)の上昇
- 血液流量の増加
- 左室拡張末期容量&圧の減少
MAPの上昇と血液流量の上昇に伴う循環動態の改善に加えて、左室拡張末期容量&圧の低下による心仕事量の軽減が期待できます。
自己心の回復につれて補助レベルを徐々に下げていくようなイメージです。
また、左室から駆出が良くなるという事は、左心の前負荷=肺動脈楔入圧の軽減も期待でき、肺への効果も期待できます。
PCPSと併用も可能で(=エクペラと呼ばれる)併用することでPCPSによる逆行性の負荷も含めて右心左心両方の負荷を軽減できます。
臨床での管理における注意点と考え方
臨床でよくみられるトラブルとしては以下があげられます。
- 固定方法が特殊なため注意が必要
- 左心室内の位置がかわることによるアラーム
- 循環動態の変動によるアラーム
- 溶血が起きやすい
- 他の補助循環装置同様のトラブル
1.固定方法が特殊なため注意が必要
PCPSもIABPも、鼠経から挿入して固定をするときは寝かせてフィルムドレッシングを上から貼って固定すると思います。
IMPELLA 2.5の場合は上記のような方法で良いのですが、IMPELLA CPの場合、挿入に対して20度~30度程度立てて固定するようになっています。
写真からもわかるようにフィルムドレッシングを上から完全に貼れないため、固定も不安定ですし感染の面での問題もあります。
補助循環を使用する人はHITでもない限りほぼ100%ヘパリン併用だと思うので出血からの創部汚染にもつながりやすいです。体位交換の時や、上から布団をかけるときなども注意が必要です。
当院の場合、体位交換についてはスモールチェンジ法も併用して対応しています。
2.左心室内の位置が変わることによるアラーム
位置不良アラームとして知らせてくれます。
PCPSやIABPに比べて固定方法が特殊なため、外側からの力で抜けてしまうリスクも高いのですが、左心室内にポンプが挿入されているため以下のようなことも起こりえます。
- 左室の縮小に伴い壁に当たったり吸入不良が起こる
- 左室の回復に伴い拍出が増加し、ポンプの回転数と相まって徐々に大動脈弁側に抜けていく
特に2番目に関しては医療者側が動かしていなくても体内で動いているというパターンがあるため、モニターの管理や循環動態の変動に注意が必要です。
幸いIMPELLAのアラームは優秀なので、そうなった場合は医師に心エコーを当ててもらい、少しのずれであればその場で少し引いたり押したりして位置の調整が可能です。
3.循環動態の変動によるアラーム
こちらもよく起こるアラームです。
アラームの名称としてはサクションアラームとして知らせてくれます。
補助レベル(回転数)を上げることで血液の吐出が多くなると述べましたが、サードスペースへの移行(今は言わないでしょうがわかりやすくするために)やoutバランスによる脱水傾向などで左室内の血液が減少することで起きます。
上記以外にもポンプの位置がずれている場合もなることがあります。
単純に足りないだけであれば補液を追加すればよいのですが、炎症によって血管が開いてたりして血管内脱水の場合であればアルブミン製剤、輸血等の選択肢も出てきます。
広域抗生剤は行っているはずですが、そういった抗生剤の知識やin outの確認、CVPや血圧の継時的な変化等総動員してなぜなっているのかを確認しなければいけません。
また、循環血液量は足りているがただ単に補助レベルが強すぎるだけの可能性もあるためそのあたりも含めてのアセスメントが求められます。
4.溶血が起きやすい
ポンプの回転数が多いほど溶血が起きやすいです。
採血データの確認や血尿の有無など確認が必要です。
また、イレギュラーとして溶血によって血小板の減少が起きやすいですが、ヘパリンによるHITの可能性もあるため注意しましょう。
5.他の補助循環装置同様のトラブル
こちらはPCPSやIABPと同じようなトラブルです。
- 出血傾向
- 下肢の血流障害
- ACT、APTTの管理
まとめ
- IMPELLAには2.5、CP、5.0とあるが多くの場合はCPが選択される。
- 特に2.5とCPは経皮的に挿入でき、緊急性のある症例では素早い対応が可能となる。
- IMPELLAによって左室の負荷が軽減され、MAPや血液流量の増加、左室拡張末期容量&圧の低下が期待できる。
- 患者、医療者どちらに対して他の補助循環装置に比べて負担が少ない。
管理する上では以下の点に注意して適切な管理を心掛ける
- 固定方法が特殊なため注意が必要
- 左心室内の位置がかわることによるアラーム
- 循環動態の変動によるアラーム
- 溶血が起きやすい
- 他の補助循環装置同様のトラブル
今回は以上になります。
ありがとうございました。
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