
古民家とはなんなのか
古民家の定義とは
まず古民家を定義しましょうか。
人それぞれ思い描いている家は違うと思うので。
一般的に古民家とは建築後50年経過した建物とされるが、
一般社団法人全国古民家再生協会での「古民家」の定義は、昭和25年の建築基準法の制定時に既に建てられていた「伝統的建造物の住宅」すなわち伝統構法とする。
*昭和25年=1950年
*以前まで古民家再生協会HPに上記の定義が載っていたのですが、残念ながら消失していました。
では伝統工法とは何でしょうか?
人によって定義が様々でありひとくくりに表現できるものではありません。
ですが、ある程度定義しておかないと話が勧めにくいので定義します。
「伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験」検討委員会HPより
地域、気候風土によって幅がありますが、最大公約数的な要素を抽出して、伝統的構法を「丸太や製材した木材を使用し、木の特性を活かして日本古来の継手・仕口によって組上げた金物に頼らない軸組構法」と定義します。
参考資料としいて、リンク先のHPにPDF形式で資料が用意されているので、興味のある方は読んでみてください。
ここまでを簡潔にまとめて、今回の記事内での定義として以下を用いて話を進めていこうかと思います。
古民家の定義
- 「金物を使用していない木組み」「基礎と直結していない石場建て構法」の伝統工法で建てられている
- 昭和25年の建築基準法が作られた時にはすでに建物として存在していた
その中では築50年を経過しているものを古民家としつつ、その古民家をさらに2つに分類しています。
- 1950年以前に建てられた古民家:伝統工法
- 1950年~1981年の間に建てられ築50年経過している古民家:在来工法
今後私のブログでも、こういった定義で話を進めていくつもりです。

古民家と現代家
あくまでイメージとして
古民家
- 免震構造
- 梁と柱と土壁
- 基礎はなし(置いてるだけ)
- 屋根が壁よりも出ており(庇〈ひさし〉)、日光を遮る
- 木の1本1本が太く長く切り出されているものが多く、必然的に大きな家になりがち
- 木材は国産の自然乾燥されたものが使われている
地面の上のネズミ色は石
緑は一応畳のつもり
現代家
- 耐震構造
- 筋交い入り壁と基礎
- 基礎は地面と連結
- 庇がないか、あっても少しだけ
- 木の1本1本は工場でプレカットされており、品質的に統一されている。また小さく切れる分小さい面積で建てることができる。
- 輸入木材も使われている
ネズミ色はコンクリート基礎でぱんぱんに詰まってる
コンクリート基礎も地面に突き刺さってる
古民家
スカスカで床をめくったらコンクリート基礎はないので土が見える。
スカスカな分、地震の横揺れが来たら青い→のように柱が横に流れたりします。
地震の縦揺れに対しても基礎と直結ではないのでダイレクトには伝わらない
倒れないのか心配になるかもしれませんが、頭上には梁が複雑に絡み合っており、木と木の結合部も金物でガチガチに繋げてはいないため、梁や木の接合部がうまい具合に軋んだりしながら力を逃します。
これがいわゆる免震の働き。
良いことばかりではなく、梁はそれこそかなり複雑に絡み合っており、使われている木材も太くしっかりとしているため、複雑な絡み合いを誰でもできるわけではないし、そもそも古民家に使われている木材と同じレベルを使うとなると値段がとんでもない。
悪く言うと作り手の能力が家の性能に直結しやすい。
現代家
コンクリート基礎がガッチリ決まっている。
決まっている分地震の力はダイレクトに伝わるが、それに対して固めて家を守る。
これがいわゆる耐震の働き。
古民家に比べて、法律的な面や化学的な面で立証されており、木材も向上でプレカットされるなど製品としての性能は上がっている。
その為値段の面でも性能の面でも均一化出来ていると言える。
言い方を変えると誰が作っても同じものができる。
現代家の考え方
日本の場合、古い家に価値はありません。
固定資産税でも30年もたてば0円ですし、人々の価値観でも私たち古民家好きを除いて古い家に価値はありません。
私は家の売買が商品になったと表現してきましたが(資産ではなく)、その考えこそ改めるべきだと思っています。
1家族が1つの家を建てる時代で、多くの人は35年ローンを組みます。
ですが、その家も自分が高齢者になるころには価値のないものとして扱われます。
一説には、日本の住宅の寿命は30年と言われています。
古い=価値がないという価値観が根付いているので、自分の子供たちにとってもその家は負の財産としてとして残ります。
結果として、人口減少も相まって日本では空き家問題が年々深刻化しています。
新築に憧れたことがないので詳しくはわかりませんが、新しいもの=良いものという作り上げられた価値観に引きずられすぎではないでしょうか?
古いもの=価値がない、家は資産ではなく商品という価値観のためメンテナンスの意識も薄れているように思えます。
もちろん最低限のメンテナンスはするのでしょうが
「この家を100年残して何世代にもわたって残したい。そうすれば子供が家を買わずに金額的に楽になる!」
こういった考えの人は殆どいないのではないでしょうか?
海外では家を資産と考え、古いものにも価値があります。
家は受け継がれていくものであり、自分の代で家を修繕しなくてもよい環境が用意されやすいです。
また、子どもが大人になったとき、子どもが家を出るのではなく親がより介護的にも楽な施設や家に移り住むという考えもあるそうです。
もちろん日本と海外で比べるには気候や地震など違いすぎますが、そういった考え方は参考にするべきではないでしょうか?
なぜ古民家のつくりはなくなったのか

結局のところ、時代の流れと言いますか、近代化が進む過程で海外の文化や考えも入ってきた結果と言えるでしょう。
ねじり鉢巻き大工棟梁の第六感的な伝統工法ではなく、科学的に立証され、規格も統一された現代の家が主流となって作られるようになっていきました。
伝統工法が現代においても良くわかっていないというのであれば、戦前の人たちが完璧に理解できるとは思えません。
その点、現代家のようにある程度規格が画一されていれば棟梁がいなくても短期である程度のレベルのものを大量に作ることができます。
人口増加(産めよ増やせよ政策[戦前だが])のために家が必要で、戦後の経済成長のためにも家を作っては壊してが必要でした。
そんな時に棟梁がいないと作れない、一つの家を作るのに時間がかかる伝統工法よりも、西洋的な工業的な家が主流になっていくのは当然でした。
もちろん西洋の文化が入ってくることで、それに憧れたこともあったでしょう。
また、他の記事でも、古民家は現代の法律では作れない(作るのが難しい)とお伝えしています。
法律的な話で言えば、よく言われるのは1950年に出来た建築基準法です。
*クロニカによると、その流れはもっと前からあったみたいです。
この資料は面白いです。クロニカより拝借。
武村雅之「濃尾地震と関東大震災」名古屋大学豊田講堂講演録.平成23年10月28日(PDF)
いつまでたってもねじり鉢巻きの大工が従わないから、法律作って強制的に作れなくしてしまったって感じなんですかね。
法律を作るくらいのお偉いさんと、現場一筋頑固おやじのそりが合わないのは容易に想像できますね。
とはいえ、いくら反抗したとしても、その法律によって、大工が経験で行ってきた伝統工法が否定されたというか、作れなくなってしまいました。
例えば「筋交いをいれなさい」「壁はこれくらい作りなさい」とかが制定されたのでしょう。
個人的には、そういった大工の経験だけで保てているような作り方を数百年も大工の経験則で作ってきたという事に驚きますが。

危険な古民家の構造とは
上記の免震と耐震の考え方がごっちゃになっている古民家が危険じゃないかと言いたいのです。
具体的には、1950年以降1981年以前に建てられた家になります。
1950年の建築基準法で、完全免震構造から耐震方向にシフトしていきます。
そして、地震のたびに作り替えられてきた建築基準法ですが、1981年に再度大きな改訂がされ、1981年以降を新耐震基準とよび一定のレベルがあると評価されています。
つまり、1950年から1981年の間に建てられた家は、伝統的な古民家の作りの部分と完ぺきとは言えない建築基準法に乗っ取った作りが混在しており、それこそ免震構造としての作りと、耐震構造としての作りが混在した家が出来上がります。
一言で言えば中途半端な家と言えます。
中途半端な家はダメなのか?
1950年から1981年に建てられた家は絶対にダメなのか?
もちろん理論上は危ない耐震性のない家になるのですが、すべてが悪いとは私は思いません。
というのも、1950年の建築基準法はできたばかりで、完全にそれまでの伝統工法を制限できていたとは思えず、勝手な予想ですが1950年近くの家は、構法としての大本は伝統工法でできているのではないでしょうか?
また、現代の家と違い、輸入された木材ではなく国産の自然乾燥された、いわゆる「いい木」を使われていることも多いでしょう。
ウッドショックと言って最近も問題になりましたよね。
現代の耐震基準に当てはめると0点の家になりますが、伝統工法としての免震性能を測定すると耐震よりはいい結果になるかもしれませんよ。
とはいえ、やはり昔ながらの工務店に話を聞くと、上記の在来工法の家の中でも特に高度経済成長期に建てられた家は、お世辞にも品質的に良いとは言えないという話はよく聞きます。
古民家の免震性能を測定するにはどうすればいいのか?
現代の家の基準は耐震であり、その性能を測定するには耐震診断があります。
地震以外の性能も、インスペクションといって検査がありますよね。
古民家にも実は免震性能その他もろもろの性能を測定する方法があります。
それが、全国古民家再生協会が行っている「古民家鑑定」です。
古民家の状態、床下、耐震性(免震性)を古民家に精通した専門家が書面として提示してくれます。


でも耐震性能とか測ってみると全然だめで。
専門家の方にも耐震補強を勧められるんですよね。
なんだか自分の家がだめって言われるのはしょうがないけど辛くてね。
それに比べて、こっち(古民家鑑定)だったらしっかりと古い家は家なりに評価してくれるからうれしくてね。
もちろん法律的にも科学的にも証明された安全を目指すなら耐震補強をした方が安パイです。
その為万人に勧められるやり方とは違いますが、少しでも興味のある方は、教会の方に話を聞くだけでも変わるかもしれません。
現代に残されている古民家の扱いとは
数は少なくなっていますが、古民家は残っています。
大手のHPに行っても、古民家再生を打ち出しているのを見かけます。
ですが、すでに何度も述べた通り、「古民家を古民家のまま扱う」のはかなり難しく、そんじゃそこらの工務店に出来たものではありません。
古民家と現代家の構造の違いを見たと思いますが、古民家を古民家のまま扱える工務店は、構造を変えずに古民家を文字通り再生できます。
変な言い方になりますが、スカスカの古民家のまま地震にも負けない古民家を再生できます。
ですが、その辺の技術がない(ふつうはないが)工務店などは、古民家再生を打ち出してはいますが、古民家の構造に筋交いや基礎を作って古民家風の現代家に作り替えています。
つまり、スカスカの古民家を筋交いも入れて基礎も打ってガチガチの古民家風に作り替えているのです。
これを古民家再生と言っているのです。
この再生がどういった経緯で行われているのかはわかりません。
- 古民家の構造を知らずに耐震性がないと言ってリフォームしているのか
- 古民家の構造は知ってるが、古民家委再生できる工務店に客が逃れるのが嫌だからだましてリフォームしているのか
いずれにしても、今では再生するのが非常に難しいと言われる伝統工法が、どんな理由でもつぶれていってるのは事実です。
結局どちらが良いのか
私が古民家を押しているからと言って勘違いしてほしくないのですが、私は古民家の方が優れているという話をしたいわけではないですし、そういった話はした記憶はありません。
考え方の違いであり、結局のところ地震が来た時にしかどちらが優れているのかはわからないのです。
その為そういったどちらが優れているのか論争については言及するつもりはありません。
そもそも専門家でもないですし言及できる力もないですし。
他の記事でも伝えており、私が一番したいことは、古民家もしっかりとしたポテンシャルがあるのにしっかりと伝えられておらず、伝統的な古民家がなくなっている現状を変えたいということです。
古民家の存続は、日本の伝統を守ることに直結すると思っています。
私のブログをどれくらいの方が読んでいるかわかりませんし、大本が看護師ブログなのでブログの力もほぼないですが、このブログを見た方が少しでも考えを改めてくれたらうれしいです。
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