
この記事の内容
- コロナウイルスによる医療者への影響
- コロナウイルスによる患者への影響
この記事の作者について
- 3次救急病院で夜勤ありの看護師をしています。
- 現在は集中治療室勤務です。
当院のコロナウイルスに対する対応策
全国でコロナウイルスによるニュースが連日報道されています。
ワクチンによる期待感も徐々に出てきている状況ですが、実際の現場には期待感はみじんもありません。
むしろ、日に日に増加している感染者数に対して絶望感が高まっている状況です。
まず、当院のコロナウイルスに対する対応として以下の通りです。
- 新しくくる患者前例に対してPCR検査
- 面会は全て禁止。必要な物品の受け渡しも看護師を介して行うため患者に合うことはできない
- 病棟を一つ潰してコロナウイルス病棟(以下コロナ病棟)にしている
- そこの病棟には各病棟から派遣された看護師で対応し、担当科については主に呼吸器内科と感染症科で対応している
潰れたのは外科病棟です。
そのため本来そこでオペ予定だったものは他の病棟で対応したり、延期になっている状況です。
面会も禁止で、ケースバイケースですが、当院の場合は死に目に関しても必要最低限の人数をお願いしているため家族しか会えてない状況です。
「もうすぐ亡くなりそうだから最後に家族以外に親戚にも会わせたい」というケースもお断りしています。
また家族であっても県外に住んでいたり、県をまたいでの出張や旅行をした方に関してもお断りしている状況です。
各病棟から看護師が派遣される件についてですが、ある程度の基準を設けて選定されています。基準としては以下の3つです。
- 独身者
→家に帰っても移す可能性が低いためホテルの準備はしなくても大丈夫なため。 - 1人暮らし
→上記同様 - 中堅層以上
→重症化した際下の学年では対応できない可能性があるため。また、人工呼吸器管理になった際にも管理していく必要があるため。
ただし、PCPS(いわゆるECMO)を使用した際は、全ての看護師が対応できるわけでは無いため集中治療室の看護師が適時ヘルプで行っているような状況です。
現場としては試行錯誤しながらになっており、コロナに対する対応の方法も日に日に変わっており混乱することが多いです。
医療者への影響はほぼピークに!
当院のコロナに対する対応を記載しましたが、実際にどういった影響があるのか記載していきます。
コロナか否かが重要視されてきている
病院に患者でも医療者でも家族でも、だれか人が来た場合はまずコロナか否かの確認が入ります。
そのため、ただでさえ忙しく働いているところにその確認作業が入ります。
普段は1の力でできることに対して、負担が2倍にも3倍に膨れ上がっています。
当然そのしわ寄せは他の病棟や医療者に来るわけで、それらの悪循環から一向に抜け出せる気配がありません。
看護職員への影響は?
上記のようなコロナの検査や、防護服を着て対応する職員は基本的に看護師が担います。
また、コロナ病棟へのヘルプや実際のコロナ患者への生活援助や医療行為などもほとんどの部分を看護師が担います。
既に述べているように、独身・一人暮らし・中堅層の看護師から選抜されいてる状況があり今も必死に対応してくれている状況です。
通常業務+コロナ対応は困難を極め、通常できていることができなくなっている状況であり現場からしたら既に医療崩壊しているという認識です。
おそらく、こういったことは当院だけでなく全国で行われているでしょう。
元々給料や働き方に対して不満は長年あったが、環境が変わらないためなんとなく続けていたという看護師も多い状況でした。
そこに今回のコロナの影響が一気に来たわけで、いつ不満が爆発して看護師の大量離職に繋がらないか戦々恐々としています。
ここ最近のニュースで「自衛隊に看護師の派遣を要請」「不足した看護師を補充」という文字を見ることも多いですが(12/9現在)、上手くいっていない状況です。
大阪の病院は給料50万円で募集しているようですが、都市部であれば夜勤も交えてそれくらいの給料は行くしわざわざ命の危険や自分の周りへの影響を振り切ってでもそういったところに飛び込もうとする看護師は少ないでしょう。
死ななくてもいい人が死んでいく環境になりつつある
患者への影響は?
衝撃的なタイトルですが、文字通りの意味です。
本来であれば助かった命も助からなくなっていく環境が徐々に出来上がりつつあります。
どんな病気でもどんなケガでも対応するには医療者がいなければ(マンパワーがなければ)対応できません。
ただ、既に述べているように、現場は疲弊しきっており、そのマンパワーが少なくなっています。
そうするとどうなるのかというと
- 急変者に対して迅速な対応ができない
- 人手が足りないからと救急車を断らなければいけなくなる
といったことが起こります。
一時期「妊婦のたらいまわし」という衝撃的なニュースが全国を走り抜けたことを覚えている方はいますか?
その背景には全国的な産婦人科医の減少があります。
大きな病院が近くにある人は治療先が見つからないといったことは経験ないかもしれませんが、地域的な医療格差は実際にあります。
そして「妊婦のたらいまわし」と同じ「コロナ疑い患者のたらいまわし」が今全国で起き始めており、実際に当院でも経験しました。
患者の状態としては非常に危険で、結果的に無事回復しましたがその患者が運ばれてきたときは採血結果やバイタルの数字を見て本当に「死ぬ、さすがにこれは助からん」と思いました。
その患者はコロナではありませんでしたが、「熱が出ている」という理由で重症にも関わらず当院に来るまで複数の病院を断られていました。
この断ることに関しては、それぞれの病院の事情があるためまったく責めるつもりはありません。
ただ、直接被害をこうむるのは患者であり、すでに実例として上記のようなことが起きています。
今病院はコロナか否かに対して非常に過敏になっています。
医療崩壊といっても過言ではありませんし、自分に被害がなくても自分の親しい人が被害を被る可能性は十分にあるという事は認識してください。
思う事
コロナか否かに敏感になるのは病院としては仕方がありません。どんなに頑張っても感染対策を完璧にするのは難しく、またコロナの場合はウイルスを持っていても無症状の人もいます。
それなのにクラスターが発生すると全国区のニュースになり、そうなると外来やオペの中止など病院経営に対しても非常に大きなダメージが残ります。
「クラスター発生=医療者の対応ができていない」という図式に思ってしまうかもしれませんが、医療者は最大限努力しているという事をわかっていただきたいです。
コロナに対する対策は?
医療現場におけるコロナの影響を述べてきました。
拡大を防ぐためにも一人一人の予防行動が重要になります。
GoToキャンペーンも是非が問われていますが、経済のことはわからないため否定するつもりはありません。
ただ、自分がウイルスを持っているものとして動いてもらいたいです。
- 症状がないからコロナウイルスは持っていない
- 人とはしゃべらないからマスクを持って行かない
- 商品には触らないからアルコール消毒はしない
これらは全て間違いです。
コロナにかかっても無症状の人はいます。
人としゃべらなくても不意に咳やくしゃみがあるかもしれません。
「手で覆えばいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、その手で他の物を全く触らず手を完璧に洗いに行けますか?
アルコールも同様です。商品に触らなくても例えばドアや壁、トイレの水洗など全く触らずに出かけることは不可能でしょう。
だからこそ
- コロナウイルスを持っているものとして、手洗いうがい、咳エチケット等を心掛ける
- 外出時は必ずマスクをする
- 手洗いを含めてアルコール消毒もしっかりする
といった細かい行動が必要です。
まとめ
医療現場は既に限界に近い。
医療崩壊が起きているといっても過言ではない。
自分は大丈夫でも、自分の周りの人に被害が及ぶ、そして自分がその被害を広げている一人になるかもしれない。
だからこそ、今一度気を引き締め直して、マスクをする・手洗いうがいをするといった基本的な行動が必要になってくる。
油断せずに、日常が戻るように頑張りましょう。
今回は以上です。
ありがとうございました。